マルチ商法の仕組み・ネズミ講との違い

マルチ商法の搾取ピラミッド

マルチ商法(連鎖販売取引)とは、会員が新規会員を勧誘し、その新規会員が別の会員を勧誘するという連鎖により、階層的な販売組織を形成する悪質商法です。
マルチ商法が悪質とされる理由は、その仕組み上、ごく一部の上位会員だけが利益を享受でき、ほとんどの会員は、経済的にも社会的にも大きなダメージを受けてしまうからです。
また、マルチ会員の多くが、強引な勧誘活動によって友人知人に迷惑をかけるため、悪いイメージを持たれています。
マルチ業者に騙された会員自身が、他者を騙す側になるという意味で、マルチ商法に純粋な被害者はいないということになります。
夢や不安につけ込んで勧誘をする手法から、商業カルトと呼ばれることもあります。
近年では、暗号資産投資による高配当を謳う「モノなしマルチ」による被害が急増しています。
マルチにハマる人は、自己愛性人格障害NPD自己愛性パーソナリティ障害)である可能性が高いです。

関連記事:「マルチ商法にハマる人の特徴・自己愛性人格障害」

2022年10月14日、連鎖販売業者「日本アムウェイ合同会社」が、「6カ月の取引停止」という法的処罰が与えられたというニュースが注目されています。
2022年は、宗教カルト(統一教会)、商業カルト(アムウェイ)ともにメスが入れられた年となりました。
マルチ商法が嫌われる理由は、人間関係を利用して勧誘活動をする、悪徳商法だからです。
ネット上でも、過去にマルチ商法の勧誘を受けた人による、マルチ業者と会員に対する非難コメントが多く見られます。
マルチ商法は、時代の変化に合わせて、巧妙に手口を進化させています。
マルチ商法で扱われる商材は、化粧品、健康食品、宝飾品などが多いですが、最近ではプログラミング学習教材のような情報商材が増えてきています。
また、マルチ商法であることを隠すため、ニュービジネス、ネットワークビジネス、ネットワークマーケティング、マネーゲーム、MLM、紹介販売などと自称することが多いです。
集めた投資を運用せず自転車操業的に配当に回す「ポンジ・スキーム(出資金詐欺)」であるケースもあります。

マルチ商法業者は、違法ではないとする根拠を複数持ち、強固な理論武装を行っていることが多いです。
マルチ商法に騙される人の多くは、知識が乏しく、甘い話に弱い学生や主婦、若い労働者です。
そのため、マルチ商法の勧誘に騙されないためには、マルチ商法の特徴や違法性について理解しておく必要があるでしょう。

【目次・マルチ商法の特徴】

  • マルチ商法の搾取構造
  • マルチ商法の違法性と問題点
  • マルチ商法とネズミ講との違い
  • まとめ
  • それぞれのトピックについて、解説していきたいと思います。

    マルチ商法の搾取構造

    マルチ商法(連鎖販売取引)の基本的なお金の流れは、下位会員から金品を徴収して、上位会員に金品を支払い、その差額が自分に入るという、搾取構造となっています。
    また、本部に徴収された金品は、会員のランクやノルマの達成度などによって、報酬や配当として還元されるという仕組みを持っていることが多いです。
    このようなピラミッド型の搾取構造を形成することから、ピラミッド・スキームやピラミッド商法とも呼ばれます。
    上位の会員ほど高い収入が得られ、会員が増えれば増えるほど、上位層が儲かるシステムです。
    そのため、マルチの会員は、配下の会員を増やすための勧誘活動や、組織内でのランクアップに心血を注ぐようになるのです。

    マルチ会員の目標は、不労収入として高額報酬を得られるランクまで上り詰めることです。
    しかし、高額報酬を得るためには、配下会員が多数必要であるため、成功者はごく一部の上位層のみになります。
    上位層のほとんどは、マルチの立ち上げメンバー(マルチ業者)であり、一般人がこのランクに届くことはありません。
    マルチ業者が利益を上げる手段は、会員による商品の売り上げと、新規会員からの入会金、会員に対するセミナーの料金です。
    マルチの会員は、高額の不労収入を夢見て加入しますが、実際は、勧誘ノルマや継続的な商品購入、
    本部が主催する高額セミナーへの半強制的な参加などにより、経済的にも精神的にも疲弊する結果となります。
    マルチ商法は、いつかは会員数が頭打ちになり、成長限界に達し、破綻します。
    このタイミングで、上位層は売り抜けて利益確定し、多くの会員が損失を被り、借金だけが残ることになります。
    マルチ商法は、マルチ業者だけが成功し、一般人が成功を手にすることはないのです。

    マルチ商法の違法性と問題点

    マルチ商法(連鎖販売取引)は、それ自体は違法なものではありません。
    マルチ商法が違法となるのは、以下の2つのケースがあります。

    ・特定商取引法に違反したケース(ここで解説)
    ・実態が連鎖販売取引ではなく、ネズミ講(無限連鎖講)だと判断されたケース(次節で解説)

    特定商取引法では、以下のような勧誘が禁止されています。

    ・事業者名や目的を明かさない勧誘
    ・目的を告げずに密室に連れ込む勧誘
    ・相手の意向を無視した一方的な勧誘
    ・契約締結前に書面を交付しない勧誘

    これらに違反した会員が出た場合、その会員だけでなく、マルチ業者自体も処分することができます。
    2021年、アムウェイの会員が、マッチングアプリで知り合った相手に、目的を隠して勧誘行為をしたとして逮捕されました。そして、2022年、アムウェイ本部も、6カ月の取引停止処分を受けました。
    マルチ業者は、「マルチ商法は合法だ」と主張しますが、重いノルマを達成するために特商法に違反する会員が出やすい仕組みになっているのです。

    マルチ商法は、その仕組み上、トラブルを生みやすいという問題点があります。
    マルチ商法は、社会経験の浅い若者が、副業やサイドビジネスとして手を出すことが多いです。
    そのため、取扱商品の知識に疎く、販売行為にも不慣れな素人が、強引な販売・勧誘行為を行ってしまうのです。
    マルチ商法でよく発生する強引な販売・勧誘行為には、以下のようなものがあります。

    ・勧誘や商品説明の際、複数の会員で取り囲み、長時間引き止める。
    ・商品の性能を誇張する。
    ・「最後の購入チャンス」、「○個限り」などと嘘の説明をし、射幸心を煽る。
    ・「必ず儲かる」、「多くの人が成功している」などの甘い言葉で釣る。
    ・クーリングオフに対応しない。
    ・配下の会員に強制的に商品を買い取らせる。

    もし、マルチ商法関係者とトラブルになったら、国民生活センターや消費生活センターへ相談するといいでしょう。

    マルチ商法とネズミ講との違い

    ネズミ講(無限連鎖講)とは、会員が無限に増加する想定で、2人以上の倍率で増加する下位会員から徴収した金品を、上位会員に分配することで、その上位会員が払った金品を上回る配当を得ることを目的とした、連鎖配当組織のことです。
    親会員から子会員、子会員から孫会員といった形で、会員がねずみ算的に増殖していくシステムが特徴です。
    無限連鎖講は、人口が有限である以上、いつかは破綻し、会員の多くに損失を与える結果となります。
    そのため、日本では、「無限連鎖講の防止に関する法律」で禁止されています。
    マルチ商法は特商法を守っている限りは合法ですが、無限連鎖講はそれ自体が違法です。

    マルチ商法(連鎖販売取引)と無限連鎖講との違いは、会員が無限に増えることを前提とした仕組みになっているかどうかです。
    マルチ業者は、会員が勧誘できる子会員の数や、会員の活動地域を制限することで、無限連鎖講とみなされないようにします。
    しかし、マルチ商法を謳う業者でも、無限連鎖講と判断された判例が多数あります。
    マルチの業者や会員が「ネズミ講じゃないから大丈夫」と説明しても、信用するべきではありません。

    まとめ

    マルチ商法の特徴と違法性について解説しました。
    マルチ商法は、それ自体は合法ですが、違法となりやすい仕組みをたくさん持った悪徳商法です。
    本部だけが丸儲けし、会員は借金まみれになり、友人知人からも縁を切られてしまう、詐欺的な商売なのです。
    友人や親戚、先輩といった断りにくい相手から勧誘を受けても、絶対に加入してはいけません。